#0041 例文に宿る命
Are you a basketball player?
中学一年で学習する、be動詞を使った質問の文。
これを言うときなんてあるのか?と思ってしまう文の一つだけれど
あった。現実に使う機会が。
確か、結構込んだ電車の中での出来事。
お兄さんの大きな荷物を上手く置けるよう
手伝ったか場所を譲ったか何かした。
丁寧にお礼を言ってくださった。
背の高いお兄さんは、背格好と服装、スポーツの合宿のような装備から
私にはどうしても、プロバスケットボール選手に見えた。
つい尋ねずにいられなかった。
Are you a basketball player?
「いえいえ、そんなことはありません」というような答えだったと思う。
にこやかに会話を終えてから
中1の例文をそのまま使った瞬間だったと気づいた。
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I don't know what to say.
中学二年で学習する、不定詞。
これまた、現実に使う機会があった。
ディナーの約束をしていた方に、急な連絡が入った。
アメリカのご家族の、心配な知らせ。
「今はまだ情報がそろわなくて、嘆くこともできないの。
だから予定通り楽しい時間を過ごしましょう」とおっしゃるので
それなら、とお菓子探しを手伝い
イタリアンレストランで食事をし
キャリア相談にまで乗っていただいて
お別れする時
I really don't know what to say.
と口をついて出た。
Nothing.という言葉とハグが返ってきた。
「いいのよ」と聞こえた。
暗記した文として頭に格納されていたことばに
血が流れ、心が通い、相手に届く。
そういう瞬間が、ある。